不動産を売却する方の脳裏を一度はよぎるであろう不安の1つに、税金が挙げられるかと思います。
不動産売却とは大きな金額を動かす売買であり、固定資産という名前からも分かるように、頻繁に手に入れたり手放したりするものではありません。

そんな不動産の売却価格ともなれば自身の年収よりも多い額になる方が大半でしょうし、そうなればその売却価格、すなわち臨時収入にかかってくる税金に不安を感じる方も多いでしょう。

そんな方のために、今回は不動産売却において役立つ節税方法のひとつ、経費計上について詳しく見ていきましょう。

□不動産売却時に節税対策になる経費

1.不動産売却時の収入は譲渡所得

不動産を売却した価格から、譲渡費用と取得費用と呼ばれる経費を引いて算出された額こそが譲渡所得です。
不動産売却における収入とみなされます。

この譲渡所得が発生すると所得税や住民税が課税されます。
そのため、譲渡所得税は「実際に得た利益に対して課税される」といえます。

2.譲渡所得から引ける譲渡費用と取得費用

実際に得た利益に対して課税される、と聞いて、何か思い当たるものがある方も多いでしょう。

この考えこそ、譲渡費用と取得費用を経費計上できる根拠です。
不動産を売却する際、不動産を売却するためにかかった費用と、不動産を手に入れるためにかかった費用の合計が不動産の売却額を上回るケースもあります。

その場合、譲渡所得はないものとされ、税金はかかりません。

これも経費計上の結果です。
確定申告を行う際に経費計上を行うことで、譲渡所得に関わる税金を節税、あるいは非課税にまでできる可能性があります。

□不動産売却をしたら確定申告は必須?

確定申告とは、1年間の所得から算出された税金の金額を国に申告するものです。

このうち、不動産売却で得た収入は譲渡所得に含まれます。
通常のお給料は給与所得に数えられているため、総合的な所得としては合算されても、所得の内部ではまだ不動産売却の収入と労働による収入は分けて計算されています。

そのため、この譲渡所得があるかどうかによって、確定申告が必要かどうかが決まります。

しかし、元から確定申告が必要な方が、しなくて済むようになるわけではないため、注意しましょう。

1.譲渡所得がゼロの場合

譲渡所得は以下の計算式で決まります。
譲渡所得=売却価格-(譲渡費用+取得費用)

改めて一度、それぞれの言葉について見てみましょう。

不動産を売却して受け取った代金を売却価格といいます。

譲渡費用とは、不動産を売却する目的で使用した費用、つまり経費のことです。

取得費用とは、譲渡所得の元であった不動産を購入をはじめとした形で取得した際に使用した費用、つまり経費を指します。

また、建物の価格については減価償却費を差し引かれることも注意しておきましょう。

加えて、不動産を保持していた期間によっては取得費用が分からなかったり、およそこのくらいと見当はついても証明できるような書類がないケースがあることも覚えておかなくてはなりません。
そういった場合は売却価格の5%が取得費用の代わりとして計算に含められます。

上記の通りに計算式へ当てはめていき、結果売却価格と費用が相殺された場合、確定申告は必ずしも行わなくて構いません。

2.譲渡所得がマイナスの場合

現実的な話として、売却価格と経費の価格がぴったり一致することは滅多にありません。

大抵はどちらかが多くなります。

売却価格が多ければ課税対象となるため確定申告が必要ですが、経費が多い場合は確定申告をしなくても構いません。

一方で、確定申告をした方がお得なケースもあります。

・マイホームだった住宅を残っている住宅ローンの残高よりも低い価格で売却した
・マイホームだった住宅を売却し新しく住む住宅は住宅ローンを借り入れて購入した

以上、2つのケースです。

これらに当てはまれば、損益通算、繰越控除が使えるかもしれません。

どちらも確定申告の際に特例を利用することで適用できます。
譲渡所得がマイナスの場合は確定申告は義務ではないものの、節税したい方はいくつもある特例から当てはまりそうなものを探してみてください。

適用条件に当てはまれば、確定申告をすると良いでしょう。

□不動産売却時に譲渡費用になりやすいもの

不動産売却時、経費にできるものには譲渡費用と取得費用の2種類があります。

具体的にどんなものが経費になるのでしょうか。
まずは譲渡費用から確認しましょう。

1.不動産会社との契約に支払った仲介手数料

不動産仲介以外の方法で売却した場合には使えませんが、不動産会社に支払う仲介手数料は譲渡費用に当たります。
仲介手数料はどう見ても不動産売却を目的として支払った費用であるため、経費として差し支えありません。

2.印紙税

印紙税は不動産売買契約書に収入印紙を貼り納税する、少し変わった税金です。

この不動産売買契約書は2枚作成します。

売主側と買主側、それぞれが1枚ずつ保管し、それぞれが自身が保管する契約書の印紙税を支払います。
このうち、自身が支払った印紙税も譲渡所得の経費です。

3.建物部分の取壊し費用

不動産の売却を検討した際、建物が古ければ思い切って取り壊し、売却するケースもあるでしょう。

その場合の取り壊し費用も譲渡費用となります。
建物の面積や造りの頑丈さによって取り壊し費用は大きく変わるため、どの程度の経費になるかは分かりません。

しかし、建物一棟を取り壊すのにかかる費用は決して少ない額ではないでしょう。

4.そのほかの譲渡費用

ほかにも名義書換料や必要になってしまった違約金など、譲渡費用にできる細々とした出費があります。

ケースごとに譲渡費用にできるかどうかは変わってくるものの、このあたりが経費計上しやすい点は事実です。
自身が不動産を手放す前に支払っていないか、一度確認してみると良いでしょう。

□不動産売却で取得費用になりやすいもの

譲渡費用になりやすいものを見たら、次に気になるのは取得費用になりやすいもの。
取得費用にはどんなものがあるのでしょうか。

1.購入代金

不動産を取得するのにかかった費用、といえばやはり真っ先に思い浮かぶのは不動産の購入代金でしょう。

減価償却費や証明する書類も絡んでくるため計算は複雑になりますが、やはり最も取得費らしい経費です。
忘れないように取得費用として計上しましょう。

2.仲介手数料

譲渡費用でも述べましたが、仲介手数料は取得費用にも登場します。

譲渡費用、すなわち売却時だけではなく、購入時にも仲介手数料がかかるケースがあるためです。
不動産の購入時も、まず不動産会社に行って二人三脚で物件を探す方は多くいらっしゃいます。

そういった場合、購入時でも不動産会社を仲介して購入するため仲介手数料がかかります。
この仲介手数料は不動産を購入するために支払った費用ですから、取得費用として計上されます。

3.そのほかの取得費用

そのほかにも登録免許税や不動産取得税、収入印紙などといった税金をはじめ、取得費用に計上できる項目は数多くあります。

しかし、そのどれもが無条件に計上できるわけではありません。
自身が本当に不動産を取得するためにその費用を支払ったのか、よく確認してから経費計上しましょう。

□不動産売却後確定申告するときの会計処理

不動産売却後、確定申告する際の考え方として会計処理が使えます。
譲渡所得と取得費用・譲渡費用の経費について見ていきましょう。

1.譲渡所得

譲渡所得は先ほども述べた通り不動産の売却価格から取得と譲渡費用を引いて算出します。
所得の分類がどれかによって課税され始める額や課税額の計算方法も違います。

そのため、譲渡所得を給与所得と同じように計算しないようにしましょう。

2.経費

先ほど取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費として計上できると述べました。

しかし、これは取得費が不明な場合のみではありません。
取得費が分かっている上で証明できる書類がある場合も、比較してみて売却価格の5%の方がお得であれば選択しても構いません。

3.個人での会計処理

個人事業主の方であれば必要ですが、大半の方にとって不動産売買とは人生で一度か二度程度の大きな買い物です。

しかし、実際に会計処理が必要となるかどうかに関わらず、金銭の計算方法としての会計処理は優れたものだといえます。
計算に困った際は、会計処理を利用して確定申告に関わるお金の流れを確認するのも良いでしょう。

□不動産売却後に行う確定申告のポイント

不動産売却の最後に待ち受けている確定申告。

大まかな流れや必要書類については知っている方も多いでしょうから、いくつか、押さえておくべきポイントについて改めて確認しましょう。

1.確定申告の時期

確定申告の時期は毎年2月16日から3月15日の間と定められています。

とはいえ、これらはあくまでも例年の日付。
社会情勢の状態をはじめとした理由によって確定申告の時期が変わる年もありますから、毎年確定申告前に時期を確認しておくようにしましょう。

2.譲渡所得税はいつごろ支払う?

譲渡所得税には名前に含まれている所得税と住民税の2種類があります。

どちらも通常の所得税、住民税と共に納付するため税金を支払う回数が増えるわけではありません。

しかし、やはり通年よりも税金が多くなるタイミングは把握しておきたいものでしょう。
所得税は確定申告と同じタイミングでの納付が必要です。

しかし、住民税は確定申告から半年以上経ってから納付します。
6月以降の納付は忘れかけたころに税金が増えていてびっくりするかもしれません。

□まとめ

経費計上で譲渡所得を減らしたとしても譲渡所得が残れば多くの税金がかかってくる可能性が残ります。
そんなとき、次に検討すべき節税はやはりひとつひとつに複雑で細かい条件が設定されているもののそのほとんどに数百万円、数千万円単位での控除が用意されている数多くの特例です。

特例は適用条件も多岐に渡るため当てはまるものがすぐに見つかるかは分かりませんが、特例は数も多いため自身の売却した不動産に当てはまる条件がある可能性も十分にあります。

とはいえ特例には売却時期を指定するものもあるため、特例の使用を検討する場合、早め早めに行動すると良いでしょう。

福井・北陸周辺にお住まいで、不動産売買に関してご不明な点がある方は、ぜひ一度当社にお問い合わせください。

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