家やマンションに住むあなたは、台風や地震などの天災に対して不安を感じているかもしれません。
もしも、天災によって家が倒壊した場合、法律的にどのような責任が発生するのでしょうか。
今回は、天災による家屋の倒壊や崩落に関する「工作物責任」について、発生要件や判断基準をわかりやすく解説していきます。
□家の倒壊責任とは?天災で家が壊れたらどうなる?
天災で家が倒壊した場合、法律的にどのような責任が発生するのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
実は、このようなケースでは「工作物責任」という概念が関係してきます。
工作物責任とは、民法で定められた責任の一種で、土地の工作物(建物や外構など)の設置または保存に瑕疵があり、それが原因で他人に損害が生じた場合に発生するものです。
*工作物責任の発生要件
工作物責任が発生するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1:土地の工作物の設置または保存に瑕疵があること
「瑕疵」とは、工作物が本来備えているべき安全性を欠いている状態を指します。
例えば、建物の耐震性が不足していたり、外構のブロック塀が老朽化していたりする場合などが挙げられます。
2:他人に損害を生じたこと
工作物の瑕疵によって、隣人にケガをさせたり、隣家の建物を破損させたりした場合には、損害賠償の責任が発生します。
3:工作物の瑕疵と損害の間に因果関係があること
工作物の瑕疵と損害との間に、合理的な因果関係が認められる必要があります。
つまり、工作物の瑕疵が直接の原因となって損害が発生したことが証明されなければ、責任は発生しません。
*工作物責任を負う者
工作物責任を負うのは、原則として、その工作物を占有している人です。
例えば、家が倒壊した場合、その家に住んでいる人が工作物責任を負うことになります。
ただし、占有者が損害の発生を防ぐために必要な注意を払っていた場合には、所有者が責任を負うこともあります。
□天災と工作物責任の関係
では、天災による倒壊・崩落で「工作物責任」が発生するかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。
天災は、人間の力で防ぎきれない自然現象であるため、一般的には「不可抗力」として扱われます。
しかし、工作物責任の判断基準は、不法行為責任とは異なるため、天災が原因であっても、必ずしも責任が免除されるとは限りません。
1:安全性
工作物責任の判断においては、まず、その工作物が通常備えるべき安全性を備えていたかどうかが重要なポイントとなります。
例えば、過去の地震や台風などの経験を踏まえて、建物や外構が適切な耐震性や強度を備えていたのかどうかが検討されます。
もし、工作物の設置や保存に、当時の技術水準や社会通念から見て不備があったと判断される場合には、工作物責任が発生する可能性があります。
2:天災地変の強度
天災の規模が、過去に経験したことのないような、想定外の強度だった場合は、工作物責任が否定される可能性があります。
例えば、過去に経験したことのないような巨大地震が発生した場合、当時の技術水準では対応不可能な場合もあるからです。
しかし、近年は地球温暖化の影響などにより、過去に経験したことのないような自然災害が発生するリスクが高まっています。
そのため、工作物の設置や保存においては、将来発生する可能性のある天災の強度も考慮する必要があり、従来の基準の見直しも検討されるべきです。
3:損害の内容
工作物の瑕疵と損害との間に、社会通念上、相当な因果関係が認められる場合にのみ、工作物責任が認められます。
例えば、隣家の崩落によって家の一部が破損した場合、その破損が隣家の瑕疵によって発生したことが証明されなければ、工作物責任は発生しません。
また、被害者が異常な行動をとったために損害が拡大した場合には、工作物責任が否定される可能性もあります。
□まとめ
天災によって家が倒壊した場合、法律的にどのような責任が発生するのか、不安に感じる人も多いでしょう。
今回の記事では、天災による家屋の倒壊や崩落に関する「工作物責任」について、発生要件や判断基準を解説しました。
工作物責任は、天災が原因であっても、必ずしも責任が免除されるとは限りません。
建物の設置や保存に瑕疵があった場合、または天災の規模が想定外だった場合など、様々な要因が関係してきます。
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